いいえ、その日は舞台なので。

舞台へ通う金欠庶民の感想ブログ

そこはかとなく燃ゆる


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3/14 マチネ

サンモールスタジオにて

 

[あらすじ]

とあるシェアハウス。
国が決めた施策で集められた人々。

一日三食支給。家賃無し。自由恋愛。
「───なあ、ここは楽園だ。そうだろ?」

こんな家じゃまともに子供も産めやしないからさ。
一途な恋も叶うはずないよな。
今日も元気でバカな私を演じて、私を隠して。
隣の部屋じゃ、あの子が襲われてる。
そりゃ仕事が見つからなきゃ嫌にもなるよ。
人をあやめたら、必死で逃げなきゃいけないし。
まぼろしが見えるのもしょうがないか。
今日もお手紙届いたよ、だけど。
本当の私って誰だったんだっけ。
まぁいいや、お金があれば何でも叶う。
あなたがいれば何も怖くない、だから。
もうすぐ戻るから、待っててね。

彼らがここで生きる理由とは───。
会話劇を中心とし、”人間らしさ”を鮮明に描きとる群像劇。

 

観劇直後の感想がこちら。

(誤字には目を瞑ってください)

 

 

片思いに浮気に妊娠に中絶にと携帯恋愛小説の王道か?といった具合でもーーーーーーーめんどくせーーーーーーーーと思いながら観てしまった。ニンゲン、カカワル、メンドウクサイ。

とはいえ(ツイッターのツリーにも繋げていますが)あの演出はラストの「落とし」の為に必要だったのだと思います。「懸命に生きる」ということを万人に分かりやすく簡単に表現するのに「恋愛」が適当だったのでしょう。戯曲的にその要素を無くすことはできないししなくて良い。

 

あえて恋愛を選んだのだと仮定すると、繁殖=生、「死の対岸にあるもの」という考え方なのかな。

恋愛自体が悪いという訳ではないのでもっと複数の要素を組み合わせるか、登場人物を減らすか、公演時間を短くすればこの面倒臭さは避けられたんじゃないかなと…。

 

 

これを書くために改めてあらすじを読んだのですが、これ群像劇なんですね。管理人が社会不適合者でなければもっと一人一人の役に共感し泣いたり悲しんだりできたのかも知れない(遠い目)

 

 

ラストの「落とし」

こいつぁ良いぞ!と心の中のおっさんが一升瓶を掲げたラストでした。

この演目、あらすじにも書いてある通りシェアハウスでのお話なのですが、結果としてこのシェアハウスは臓器提供をする家畜を育てるために国が用意した施設なんですね。

シェアハウスに住むのは身内が犯罪を犯し世間から迫害された家族や自ら殺人を犯した犯人など。身寄りがなくお金がなく住むところにも困っている人々。そういう人を集めて強制的に臓器提供者にしている訳です。

しかし入居者たちはそんなこととは露知らず恋愛をしたり将来を考えたりしている。その対比が滑稽で哀れなのです。

また、社会からはみ出した人間がどのように扱われるのか、自ら考え勝ち取る道を閉ざした者がどこへ向かうのか、いずれは死んでしまう人間が懸命に生きる意味とは何なのかと投げかけるような内容になっています。

 

真実を知り妹を助ける為にシェアハウスに戻る姉、殺人犯と共にいることを選んだ妹、成仏できずに彷徨う兄、恋人と結婚がしたい彼女、浮気をしている彼氏、妊娠した浮気相手、妻を救えなかった男、虐待された少女、借金を返すため国に雇われた女。そんな人たちが暮らす楽園のような掃き溜め。

 

こうやって書くとシチュエーション的にはとても好みなんだよなぁ…

できることならラストを知った状態で再観劇をしたかった。

大いに救いとなったラストシーンですが、強いて言うなら少し長すぎたように感じました。パッと終わって「あれ?今見ちゃいけないもの見た?え…?」みたいな、ぞわっとした感覚だけが尾を引くバラしすぎないラストが個人的には好みです。

 

 

・冒頭から既に故人である三兄妹の長男がいるのですが、彼が観客に話しかけたりするのは少し不可解でしたね。あまり必要性を感じなかった。作家が説明として入れた部分を「説明しすぎ」だと管理人が感じたのか、他に何か意図があったのかは分かりません。

観客に話しかける時と兄の時と性格が違いすぎて人格の連続性を感じなかったのも不可解だったことの一つ。死んでから人が変わってしまったという訳でもなさそうでしたけどね。

あと衣装の話ですがワイシャツのサイズを一つ上げても良い気がします。もう少し裾が短いと尚良い。

 

・結果として好ましい演目ではなかったものの役者さんの演技はどの方も良かったです。演技の良さに加えてそれぞれが本来持っている雰囲気を活かすキャスティングをされているなと感じました。

 

・髪の手入れが行き届いていては~~身だしなみにお金をかけていらっしゃる~~と感心するなど。特に殺人犯の男性の方。あれご自分でセットされているんですかね?雑誌に載っているような完璧に美しいスタイリングでした。凄いなぁ。