いいえ、その日は舞台なので。

舞台へ通う金欠庶民の感想ブログ

ミュージカル『VIOLET』感想。ネタバレ、ストーリー


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9/5 マチソワ

東京芸術劇場プレイハウスにて

[あらすじ]

1964年、アメリカ南部の片田舎。幼い頃、父親による不慮の事故で顔に大きな傷を負ったヴァイオレットは、25歳の今まで人目を避けて暮らしていた。しかし今日、彼女は決意の表情でバス停にいる。あらゆる傷を癒す奇跡のテレビ伝道師に会う為、西へ1500キロ、人生初の旅に出るのだ。長距離バスに揺られながら、ヴァイオレットは様々な人と多様な価値観に出会い、少しずつ変化していく。長い旅の先に彼女が辿り着いたのは―。

 

キャスト

ヴァイオレット:唯月ふうか、優河

モンティ:成河

フリック:吉原光夫

父親:spi

 

アメリノースカロライナ州にあるスプルースパインからオクラホマ州東部にあるタルサという町へ向かうヴァイオレットと、同じバスでフォートスミスへ向かう軍人、白人のモンティと黒人のフリックがメインとなるお話。

好みの演目では無かったのにボロ泣きした。あまりに音楽の力が偉大すぎる。好きではないけど嫌いになれない。

女性差別と女体信仰、ジャッジする側とされる側、差別する方とされる方、色んなものがごっちゃごちゃになっていて立つ場所を一歩でも変えれば別の世界が見えてくる様な不思議な演目。

 

今回観劇できなかった人も多いと思うのでなるべく順を追って書いてみますが1万3000文字ほどあります。死ぬほど長いのでご注意ください。

ストーリーは黒字、感想は灰色で表記。ストーリー部分は出来るだけフラットに書いているつもりですがどうしても主観が入ってしまいますのでご容赦を。セリフは正確性に欠けます。ニュアンスでお読みください。

 

 

①冒頭

モノクロの映像がスクリーンに映し出されるところからスタート(多分大統領のスピーチ映像)

五円玉の様に真ん中がくり抜かれている円形のセット(色気の無い表現…)中央にヴァイオレットとリトル・ヴァイオレットが向き合って立っている。

 

この円が上下半分に分かれる形で変形していくのがとても好きだった。何故だかねじまき鳥クロニクルの舞台セットを思い浮かべた。

下部分はそのまま盆となり、上部分はオブジェとして劇中ずっと宙に吊られている。オブジェにはトケイソウ(別名パッションフラワー。キリスト受難の花)が映し出される。因みにこのトケイソウは二階席からは観えない。

 

父親が薪割りに使用していた斧の刃が外れて飛び、リトル・ヴァイオレットが怪我を負ったことが分かる。テレビ伝道師(テレバンジェリスト。テレビ番組で活動するキリスト教伝道師)に傷を治して貰いたいと願うヴァイオレット。

♪井戸の底深く

 

 

②ヴァイオレットが旅へ出るため荷物を持ちバス停に居る

町人に「どこかへ行くのか?」と聞かれて「荷物とチケットを持ってバスを待ってるのが分からないのバカ」と答えるヴァイオレット。かなりインパクトがあるワンフレーズ。

「この町人が私と目を合わせたなら、旅をやめてもいい」と考えるも町人はヴァイオレットの顔を見ることはない。

「ほら、怯えてるよ」とヴァイオレット。

因みにヴァイオレットが旅に出る時、父親は既に他界している。

 

バスが到着。

同乗者の老婦人がヴァイオレットの持つボルチモア教理書(60年代後半に廃止されるまで米国のカトリック教会で一般的に使われていた教理解説本)を見て「こんな片田舎にカトリック信者?」と声をかけてくる。この本はヴァイオレットの母のもの。母がそうしたようにヴァイオレットもこの本に忘れたくないことなどを書き込む。大切な旅のお供。

乗車チケット確認の際に運転手がヴァイオレットの顔を見て小さく悲鳴を上げる。先ほどの町人や運転手の態度から相当大きな傷があることが伺える。

「じろじろ見やがって。随分と自信があるようだけど自分はどうなの?目は細いし鼻も低くて肌はガサガサ。こんな顔イヤだ。でもその黒髪は素敵」自分の容姿にコンプレックスがある分、外見主義気味のヴァイオレット。老婦人の緑の瞳が美しい、その綺麗な肌が欲しいと歌う。「来週になれば自分もそうなれる。きっとみんな驚く」と旅への期待を膨らませる。

♪驚くさ

 

老婦人は少し馬鹿にしたようなニュアンスで「こんな片田舎に~」と声をかけて来るがその後人懐っこくヴァイオレットに話しかけたりするので心理がいまいち分からない。

優河ヴァイオレットは手負いの獣のようで、いかにも人を馬鹿にした吐き捨てるような物言いをするところが好みだった。声がとにかく良くてこの時点で優河ヴァイオレットから目が離せない。

ふうかヴァイオレットは幼さが先に立つ。自分が頭が良いと思っている世間知らずな女の子という印象。個人的にハリーポッターと賢者の石のハーマイオニーがイメージに近い。

 

 

③♪マイウェイ

 

 

④バスが休憩所(停留所)に停車

フリックとモンティが出会う(二人は既に知り合いなので正確には再会)

カフェのような場所のカウンターで談笑しているとウエイターがフリックに「困るよな、くそニグロが軍服を着たら一人前だと勘違いするから」と暴言を吐き、ヴァイオレットが仲裁に入る。

「私は傷ついた人の気持ちが分かる」と言うヴァイオレットに対し「一年前ならフリックは俺たち白人と同じ場所にいるだけで牢屋にぶち込まれてた。簡単に分かるなんて言うな」と言うモンティ。

※当時黒人はカウンターに座ることを許されていなかった。1964年アメリカ国内において人種差別を禁ずる法律、公民権法が合衆国連邦議会で成立している。

 

モンティはウエイターに「困るよな、ただのガキがエプロンを付けただけで一人前だと勘違いするから」と吐き捨てフリックと共にカウンターを離れる。

 

 

⑤ヴァイオレット、モンティ、フリックの三人でポーカーをする

過去にリトル・ヴァイオレットが父親からポーカーを教わった時の様子と現在ポーカーをする三人の様子が同時進行で展開される。

リトル・ヴァイオレットは数学が苦手。黒板に答えを書く際に男子の横を通らなくてはならず、顔の傷を見られるのを嫌がっている。

♪M&M‘s

 

ポーカーのルールをいまいち把握していないので目が回る情報量だった。父親は「数学ができないと損をするぞ」と言いながらヴァイオレットが貯めた小銭をぶんどる。ヴァイオレットの気が強いのでなんとかなっているが常に斜に構えた態度の父親は正直印象が良くない。

 

(現在の)ポーカーはヴァイオレットの勝ち、二番手にフリック、「楽しい遊びの筈なのに、これじゃ殺し合いだ!」とボロ負けのモンティ。

♪引きの強さ 

 

 

⑥車内での会話

ヴァイオレットがモンティとフリックに旅の目的を打ち明けるが(テレビ伝道師に会い、現在の顔を美しい顔に交換してもらう)モンティはスルー、冗談だと思ったフリックは大笑いする。

フリックが「俺の顔と交換したらどうだ?」と提案するがヴァイオレットは「あんたと交換してどうするの?私は美しいと思われたいの」と発言。「肌の色がどうこうじゃなくてあんたの顔が駄目ってこと!」とフォロー(?)をするもフリックはバスを降りて行ってしまう。

「フリックを傷つけてしまった。自分は人の痛みが分かるプロの筈なのに」と落ち込むヴァイオレット。「すぐに戻ってくる」とモンティはフォローを入れるが、ヴァイオレットと二人で話している内に「どうせ地元じゃ男も居ないんだろ?」と絡みだす。

 

「男も居ないんだろ?」と言われたヴァイオレットが「いいえ。何人もの男たちが激しい争いを繰り広げながら部屋を出入りしています」と言うので会場に笑いが起きていた。

優河ヴァイオレットは途中までえ、そうなの?と思ってしまいそうなほど冷静なトーンで、ふうかヴァイオレットは強気に嘘だとすぐに分かるトーンでこのセリフを言う。

 

モンティ「女一人。男も居ない。なんて可哀想なんだ。自分が一番悲しいような顔をして」

ヴァイオレット「全ての答え分かった気でいても真実はもっと複雑なもの。ただの悪ガキが男を気取ってどんな女も簡単に落とせると勘違いしてる。私が隠されたその痛みを暴いてやろうか」

モンティ「すべての答え分かった気でいても真実はもっと残酷なものだ。恐れることを覚えとけよ」

♪答えと真実

 

モンティ「醜い振る舞い、醜い行い、醜い生き方。人間なんてみんな醜いんだ。テレビ伝道師だって同じだ」

ヴィオレッド「かわいこちゃんが一生懸命考えた台詞ね」

モンティはヴァイオレットの本を奪い、本に挟んであった封筒を頭上でひらひら振りながら陽気に歌を歌う。ヴァイオレットは必死に取り返そうとするが届かない。戻ってきたフリックの一喝により場は収まる。

 

この時点で個人的にモンティの好感度がめちゃくちゃ下がっている。本を奪うシーンはクラスで女子を虐める男子のよう。

女には男がいなくちゃという固定概念が強くて嫌になる。その後もモンティは女性差別的な言動が多い。1964年の話なので今の価値観で測ることはできないかも知れないがしんどいものはしんどい。

 

ヴァイオレットの回想。

父親の引き出しから母の本を見つけたリトル・ヴァイオレット。

父親「勝手に開けたのか!?」

リトル・ヴァイオレット「なんでそんなに怒るの?なんでママの話をしたがらないの?どうしてママのことを知っちゃいけないの?」

父親「その本はお前が読むにはまだ早い」

リトル・ヴァイオレット「ママは私と同じくらいの歳にこれを書いたのに?ねぇママは綺麗だった?パパは、私みたいな容姿でもママを愛せた?」

 

 

⑦♪伝道師の聖歌1

全く記憶にないが曲順的にここで聖歌が入ったのだと思う。聖歌はちょくちょく入るので記憶が混ざりますね…

 

 

⑧二度目の停車

老婦人に今夜はうちに泊まってまた明日出発すればどうかと誘われるがヴァイオレットは断る。

老婦人「女の子が一人で何かを証明しようと張り切っちゃって。それを利用する人がいるかも知れない。あんな兵士たちがその答えよ」

モンティ 「先生、質問を聞き逃しちゃったんですけど」

会話に割って入るモンティ。

老婦人「私も若い時はそこそこだったけど、結局人生は大したことにならないの」

モンティ「それを先生が身をもって証明してくれたわけですか」

「あなたには話していません!」と憤慨し老婦人はバスを降りる。

 

ヴァイオレット「本当に優しいね。ありがとう」

モンティ「追い払う手助けをしてやったんだ」

ヴァイオレット「あれが?手助け?私が関心するとでも?」

モンティ「お前なんでそうやって…」

 

ヴァイオレットのありがとうは皮肉を込めたもの。モンティと同じく老婦人は言葉の端々に女性軽視的な思考が伺える。ヴァイオレットが老婦人をどう思っているのかはよく分からない。

これを書いていて気が付いたがモンティが老婦人に突っかかっていったのは老婦人がフリックに対し差別的な反応をしたからか?「あんな兵士たち」というのは主にフリックを、そしてフリックと親しいモンティを指した言葉だったのかも知れない。

観劇時は世間知らずのヴァイオレットに声をかけてくる男二人、下心があるに違いないと思った上での発言だと思っていた。

 

フリックとモンティに強請られてヴァイオレットはなりたい理想の顔の話をする。

ジーン・ティアニーの目

エルケ・ソマーの髪

ジュディ・ガーランドの顎

グレイス・ケリーの鼻

リタ・ヘイワースの肌

エヴァ・ガードナーの眉

イングリッド・バーグマンの頬

それらが欲しいと歌うが二人は悪ふざけをしていてロクに聞いていない。

「そんな奇跡はテレビ伝道師様にも無理だ」と言うフリックに「そうね。…どうせバカにしてるんでしょ。二人とも死ねばいい」と返すヴァイオレット。 

♪欲しい、全て

 

このシーンでのヴァイオレットへの二人の態度が本当に醜悪だった。そういった態度や嘲笑が彼女を傷つけてきたのにまだ踏みにじるのかと。
一方で観客をヴァイオレットに寄り添わせるには効果的な演出だよなと思う。

目、髪、顎、鼻、肌、眉、頬の他に~の口が欲しいと言っていたけど名前が分からず。

 

 

⑨妄想

テレビ伝道師と聖歌隊が登場。テレビ伝道師の番組に出演し傷を治して貰うことを妄想するヴァイオレット。リアルタイムで回している三台のカメラの映像が舞台後方に映され、テレビ収録をしているような演出。

わざわざ言うまでもないかも知れないがテレビ伝道師は物凄く胡散臭い。

♪伝道師の聖歌2

 

 

⑩バスでの会話

フリックに声をかけられヴァイオレットは妄想から覚める。ヴァイオレットは黒人と話すのは初めてだ、自分にとってフリックは外国人みたいだと話す。

フリック「それが俺を見る時に見えるもの?」

ヴァイオレット「いや、見えるのは…男の人」

フリック「それが俺だよ。他の人と変わらない」

ヴァイオレット「そうじゃなくて、大人ってこと。パパみたいな」

 

ヴァイオレット「フリックはあだ名でしょ?どこでつけられたの?」

フリック「少年院」

ヴァイオレット「何したの?」

フリック「産まれたんだよ。その後は自然にそうなる」

 

「産まれたんだよ」ってこんな悲しいセリフあるかよ…と天を仰いだ。

 

ヴァイオレット「神を信じないの?」

フリック「テレビから出てくるなんてことは信じない。俺は何かを始める時、その先に何があるかを知る必要があると思ってる。お前はテレビ伝道師の何を知ってる?」

というくだりからフリックの歌。

 

『足を踏み出せ ゆっくりでいいから

一歩踏み出せ 旅を始めよう

ただひたすらに ただ前を見て

 

自由求めて ゆっくりでいいから

ただひたすらに ただ先を見て

 

二つの生き方 どちらにするか

危険侵し 道を開くか

狭い殻の内 閉じこもったまま

世界見ずに嘆くだけか

 

喜びに溢れた人生 命の意味

見つけ出せよ 魂の持つ声を響かせ

さぁ歌えよ

 

貧しい家でも満たされていた

限られた恵み 大切にして

悪夢は語らず 引き出しの奥

夢や希望は 分け合って生きた

 

母さんの口癖はいつも

「楽しめよ 何があろうと」

 

魂の声聞いて 響かせて

さぁ歌えよ

x  歌えよ

 

世界に聞かせろよ

自由求めて ゆっくりでいいから

いつか手にするさ 自由に歌える日を

ただひたすらに ただ

 

世界なんて変えられなくても

自分の音を奏でて

他の誰も知らない 心の声聞いて

歌えよ

 

声を上げて 歌えよ

今 歌えよ

いつも 歌えよ

心の声で 歌えよ』

♪歌え

 

この「歌え」という曲が本当に本当に良かった。舞台上の吉原さん最高に最強。

腕がちぎれるかと思うほどメモったので多分あっている筈(x部分が聞き取れず。分かる方がいたら教えてください)

この曲はフリックが歌うからこその説得力だなと思うと同時に、自分は彼の言葉でなければ響かないのか?と考えて自分自身にモヤッとした。

「世界なんて変えられなくても」というフレーズがメロディーと相まって一等好きだが、ともすれば大きな問題を個人レベルにまで落としてしまうので程度には気を付けなくてはならないと感じるなどした。

 

 

⑪メンフィスに停車(乗り換えのため一泊)

親戚の家に泊めてもらうと言うヴァイオレットをモンティとフリックが引き止め、フリックの知り合いが営んでいるという宿に泊まることになる。

モンティ「(二人と行動することを渋るヴァイオレットに向かって)怖がらずに楽しんでみろよ。まぁそんなことができたらそれこそ奇跡か?」

ヴァイオレット「誰が楽しむのが怖いなんて言った?」

モンティ「言ってなくても顔に書いてある」

ヴァイオレット「分かった。行く」

モンティ「一個目の奇跡だ!」

 

この「一個目の奇跡」という言い方が好きだった。“奇跡”に対してはモンティよりもフリックの方が懐疑的なように見える。最初にヴァイオレットが旅の目的を話した時もフリックは笑ったがモンティは笑わなかった。

しかしどこかの場面でモンティはヴァイオレットのことを「頭のおかしい女」と呼んでいたので“ヴァイオレット自身”に対してはモンティよりもフリックの方が理解が深いように思う。

 

メンフィスに着いた後から時折女性が出てきて「なんて寂しいの。誰も居ないみたい。誰でもいいの」と歌う。

♪誰でもいい

 

 

⑫宿にて

宿に到着し、三人は夜のメンフィスに繰り出す準備をする。その間にヴァイオレットはラジオを聴きながら寝てしまう。夢の中でリトル・ヴァイオレットと父親→リトル・ヴァイオレットと老婦人→老婦人とモンティが踊る夢を見る。老婦人からモンティと踊った方が良い的な助言を受ける。

♪俺じゃなければ誰だろう

 

なんかもうここら辺からローリングアイしていたので記憶が曖昧です()

成河さんの白T+ドッグタグといったチャラそうな姿が新鮮でした。

老婦人が再登場したことの意味って何かあるのでしょうか。お母さんのメタファー?でもなんでこの場面でお母さんを?

英語歌詞を読んで「俺じゃなければ誰だろう」の「俺」が父親であることに初めて気がついた。これお父さん視点の曲か!俺じゃなければ誰が娘を愛するのだろう。という曲(多分)

 

 

⑬ヴァイレットが目を覚ますと部屋にモンティがいる

モンティの歌。この間メンフィスに来た時は女を沢山抱いた。メンフィスは女と遊ぶための街。後腐れのない、詮索しない女が好き、的な歌。

「彼女たち(街の女)は気にしないけどお前(ヴァイオレット)は気にしてる」どうする?とばかりに差し出された手を取るヴァイオレット。二人がキスをする直前でフリックが入室してきたので終了。予定通り街へ繰り出す。

♪メンフィス

 

「彼女たち(街の女)は気にしないけどお前(ヴァイオレット)は気にしてる」ってくだりが良く分からなかったんですがどう解釈していますか。

貞操観念の高いヴァイオレットを煽った言い回しなのか(みんながやってることなのにお前はできないのか~弱虫~的な)

“気にしてる”ヴァイオレットを気に入ったのか(一夜で終わらせるつもりがない)

物珍しいので遊んでみたいのか(自分は本気じゃないけど相手が本気だと気分が良い)

 

 

⑭クラブのような場所

ミュージックホール・シンガーの歌に合わせ騒ぐ三人。大きな体でぴょんぴょん跳ねるフリックが愛らしい。モンティはヘドバン派。その内にモンティとヴァイオレットが手を取って踊り出す。

一時場を離れていたフリックが戻ってくると二人が抱き合っている姿を目撃。見られていることに気がついたヴァイオレットは気まずそう。モンティと離れ一人で宿に戻る。

♪Lonely Stranger

 

 

⑮宿にて2

宿に着いたヴァイオレット。フリックが声をかけてくる。顔が近づいた拍子にフリックとキスをしそうになるが宿の主人の介入によって終了。

ヴァイオレットが眠っていると誰かが入ってきた気配がする(部屋の鍵は壊れていてかからない)ヴァイオレットはフリックの名を呼んだが気配の主はモンティ。なんやかやで一夜を共にする二人。

 

ヴァイオレットの回想。

下校中のリトル・ヴァイオレットの後をクラスメイトの男子がついて回る。男子はヴァイオレットのことが好きだと言うが嘘だということがすぐにバレる。ヴァイオレットと寝たら5ドルが貰えるらしい。

男子「山分けでもいいよ」

リトル・ヴァイオレット「お金はいらない。優しくしてくれるなら」

 

人類にとってセックスとは何か?とずっと考えていた。男女が一緒にいたらセックスしないと死ぬんか?

そもそもヴァイオレットはフリックを待っていた風なんですけどね。ダブルブッキングしなくて良かったね。「フリックは?」と聞くヴァイオレットに「呼んでくる?狭くなると思うけど」と答えるモンティが中々でした。

 

 

⑯ピロートーク

モンティ「グリーンベレーに志願したんだ。誇りに思ってくれると思ったのにお袋に泣かれちゃった。あんなに泣いてるお袋は初めて見た」

ヴァイオレット「きっと誇りに思ってるよ」

 

その他モンティの愛車であるノートン(イギリスのバイク)の話など。

ヴァイオレットの膝枕で寝ていたモンティが突然泣き出す。大丈夫だよ、今は安心して眠りなさいと慰めるヴァイオレット。

♪静かに眠れ

 

モンティお前??????????????としか思えなかったシーン。散々女性軽視系の言動をしていたが泣く時は女に慰められたいと?女はお前のお母さんじゃないんだが?

何故男が泣くと女が慰めなければならないのか…と思ってしまい拳を握りしめるしかなかった。女性側が自発的に「好きだから支えたい」みたいな場合もあるだろうがモンティは一夜の相手だし全然そんなレベルの関係じゃなくない???

 

モンティが泣くのはノートンに乗って自由に駆け回っていたいという夢と、グレーンベレーに行かなくてはならないという現実との間で彼なりに葛藤があったのだという解釈で一時落ち着いたのですが

グリーンベレー設立当初、正規部隊の指揮官たちは、自身の部隊の優秀な兵士が特殊部隊に編入されてしまうため、グリーンベレーを嫌っていた。元々、正規軍からの叩き上げ軍人は特殊部隊を嫌悪する傾向があり、特殊部隊に志願しようとする兵士に嫌がらせが降りかかる程だった。

引用元:Wikipedia

とのことなのでモンティが何故グリーンベレーに志願したのか分からなくなった。これは設立当初だけの話で1964年くらいになると名誉なことだったのかなぁ。そもそも志願制度なのだから志願しなきゃ良かったんじゃ…。そういったことができないような雰囲気があったのか…。

因みにこのシーンで泣くのは成河さんのモンティだけだそうです。そういうこと…そういうことする…!!(suki)

でもこれにより泣くモンティに辻褄を合わせると泣かないモンティに違和感が出るし、泣かないモンティに辻褄を合わせると泣くモンティに違和感を覚えますよね。泣かないモンティを観ていないので何とも言えませんが。

 

 

⑰♪誰でもいい(リプライズ)

 

 

⑱フォートスミス(モンティとフリックの目的地)に到着

翌日甲斐甲斐しくヴァイオレットの世話をするモンティ。フリックは二人が一夜を共にしたことを察しヴァイオレットを詰る。

フリック「モンティがどうしてお前にお菓子を買ってくるか分かるか?その方がお前と話すより楽だと思ってるからだ。モンティは誰かに構われたいだけなんだよ。

どうせ最後までやったんだろう。お下がりはごめんだ。お前も所詮他の奴らと変わらない。うわべだけの寂しいを慰めて」

 

ヴァイオレット「昨日はあんただってやる気満々な感じだったけど?ベッドへの招待状でも出せば良かった?モンティは勇気を出したよ。あなたはモンティに嫉妬してるだけ。

『二つの生き方 どちらにするか』一歩踏み出してみたの。モンティはガキだよ。間違いでも良い。後悔はしてない。忘れられない夜になった」

 ♪さよなら

 

フリックはバスを降りる。

 

 
⑲別れ

最後にヴァイオレットに挨拶をしたいと言うモンティ。「もう二度と会えないのに何の意味がある?」と引き留めるフリック。

それでもモンティが諦めないのでフリックは「彼女はお前がいつも相手にしている女とは違うから、傷つけないようにしろ」とアドバイスをする。

 

 「でも彼女が苦しむとき俺は側にいないから」と言うモンティのクズみ。

 

手紙を書くよ、電話を待ってるよ、楽しかったよと耳障りの良いことだけを話すヴァイオレットとモンティ。

しかし別れ際、「旅の帰りにまたここへ寄って欲しい。ずっと待ってる。愛してる」と愛を告げるモンティ。ヴァイオレットは「ふざけないで。騙されない」と憤慨する。

♪約束を

 

ふうかヴァイオレットの時は「モンティ本気になっちゃったんだな…」という印象があったけれど、優河ヴァイオレットの時は本当にモンティの真意が分からない。

グリーンベレーへ配属されて命を落とすかも知れないという状況がそうさせたのか。ヴァイオレットは素人さんだし、自分以外に貰い手がいない=断られないだろう、とか考えていそう。

そもそもモンティとフリックがいつヴァイオレットに惹かれたのかも分からないし、突然男二人に言い寄られる展開も非現実的なように思う。(非現実だけど)

 

 

⑳リハーサル

テレビ伝道師と聖歌隊が、翌日のテレビ収録に向けてリハーサルを行っている。

♪Raise Me Up 

漸くテレビ伝道師に会えたことを喜ぶヴァイオレットだが相手にして貰えずテレビ伝道師は去ってしまう。

 

ヴァイオレットの回想。

斧により怪我を負ったリトル・ヴァイオレットを抱きかかえ病院へ向かう父親。怖がるリトル・ヴァイオレットに「大丈夫だ。心配ない。もうすぐだよ。すぐに治して貰おう」と声をかける。

 

初めて父親のちゃんとした姿が観られる場面。リトル・ヴァイオレットを抱きかかえ川を渡る時に、回る盆を川の流れに見立て、流れに足を取られないようにする表現が秀逸でした。

 

聖歌隊の一人に声をかけられ、ヴァイオレットは伝道師様の癒しの力が必要なんだと訴えるが「苦しみには意味がある。祈りましょう」と綺麗ごとを言うだけで力にはなって貰えない。

♪ダウン・ザ・マウンテン

 

 

㉑チャペル

テレビ伝道師を探して教会に迷い込むヴァイオレット。再度テレビ伝道師に癒しを請うが何もして貰えない。

伝道師「私のことを癒しのジュークボックスとでも思っているのか?25セント払えば起動するとでも?それに君には何の問題もない」

ヴァイオレット「どうしてそんなことが言えるの?確かに自分の醜さを嘆くのは自惚れかも知れないけれど、醜い以上にひどい場合は?苦痛以外の何物でもない!」

伝道師「君の傷はもう癒えてる。その傷はどこにも行かない。君はそれと共に生きて行かないと」

♪チャペルにて

 

 

㉒♪Raise Me Up (リプライズ)

伝道師に癒して貰うことが不可能だと悟ったヴァイオレットは自分自身で傷を癒そうと伝道師のテレビでの振る舞いを必死に真似る。

 

 

㉓♪Look at Me

ヴァイオレット「見てよ。ちゃんと見てよ。目をそらさずに見てよ。神様、私が何をしたと言うの。どうしてこんな仕打ちを。『二つの生き方』約束だけに支えられてきた」

 

今までリトル・ヴァイオレットだけが父親と話をしていたが、ここで初めて現在のヴァイオレットが父親(の幻影)と話をする。

 

ヴァイオレット「見てよ。ちゃんと見てよ。事故だった筈でしょう?いい加減に見てよ。パパからの贈り物を」

父親「ほら見たぞ。それで?どうして欲しいんだ?謝って欲しいのか?『俺が悪かった』はい、終わり」

ヴァイオレット「終わりなんてないよ!この傷は消えない!」

父親「じゃあどうすれば良いんだ?事故は起きてしまった、それはもう変えられない。あの事故で俺の心にも傷はできたんだ」

ヴァイオレット「世界中に人に見える傷じゃなくて良かったね」

 

奇跡が存在しないことに絶望するヴァイオレットは長年心に秘めていた父親への疑念を口にする。父親はわざと怪我をさせたんじゃないか。私が綺麗だと居なくなってしまうから、誰も近寄らないようにしたんじゃないか。

 

 

㉔♪それくらいしか

父親「毎日起こしてご飯を作るくらいしかできなかった。

ママにそっくりなその目、その笑顔。でも輝くのはお前自身だ。

お前の傷を消したい。許して欲しい。

見てよ。お前はなんて美しいんだ。

俺よりも強く育てた。心の目で見るように。それくらいしかできなかった。

 

お前を幸せにしてくれる人はいるか?

…言わなくていい。

父親に秘密くらい持ちなさい」

 

このシーンでボロ泣きですよ!!!!曲を!!聞いて欲しい!!こんなの狡いじゃん!!!!!!

優河ヴァイオレットの時の「父親に秘密くらい持ちなさい」が涙声で語尾が掠れてて本当に涙不回避でした。良い演技が過ぎる。

お父さんヴァイオレットのことを本当に愛していたんだね…と思うと同時にもうちょっと普段の態度なんとかならなかったんかい!!と(心の)テーブルに拳を打ち付けた。ならなかったんだろうなぁ…不器用…(遠い目)

全文覚えていないのでアレですが、歌詞自体は英語版の方が分かりやすい気がする。「心の目で見るように」はヴァイオレット自身が、ヴァイオレット自身の美しさを見て欲しいという願いなんですね。

 

 

㉕再びフォートスミスへ

「お前のこんな姿を母さんにも見せたかった」と言う父親の言葉に顔の傷が治ったのだと思い喜ぶヴァイオレット。顔が馴染むまでは触らない、鏡も見ない、と自身の顔を確認しないままフォートスミスへ向かう。

♪驚くさ(リプライズ)

♪M&M's(リプライズ)

 

綺麗になったのだと自信に満ち溢れた状態でモンティに会うが、そこで奇跡が起こっていないことを知る。

モンティは正式にグリーンベレーに配属になり、ベトナム戦争へ行くことになっていた。「ベトナムへ行く前に共に過ごして欲しい。正式に指輪も渡したい」とモンティから告げられるがヴァイオレットはついて行かない。

 

一方フリックもヴァイオレットが来ることを待っていた。何も変わっていない自分の顔に絶望し、帰ってひとりぼっちで過ごすべきなんだと言うヴァイオレットを引き留める。

フリック「お前は俺と一緒に居るべきだ。お前自身は理想と100マイルくらい離れてると思ってるかも知れないけど…バスから降りてくる姿をお前自身にも見せてやりたかったよ」

ヴァイオレット「ジーン・ティアニーの目が欲しかった。エヴァ・ガードナーの眉毛も。頬骨だけでも。でも何も変わってない。もう放っておいて!一緒にはいられない」

フリック「一緒に居よう。今のお前は出会った時とは全然違う。見てよ、今の俺を。なりたかった自分なんだ。愛してる。君を待ってた。これからもずっと君を待つよ」

ヴァイオレット「本気なの?フリック、私を見る時、何が見える?」

♪約束を(リプライズ)

 

モンティからの愛もフリックからの愛も受け取ることが出来ず、理想の自分になれないことを嘆き癇癪を起すヴァイオレットに自己肯定感はなんて大事なんだろう…としみじみと思いました。自己肯定感が低い故に幸せになること自体を恐れてしまうんですよね。どう生きようと確実な人生も完璧な幸せも無いのにね。

 

 

㉖♪光を見せて

 

「それくらいしか」で号泣したせい&もう終わりだーと気が抜けてラストシーンの記憶がほぼ無い。光の道を歩くヴァイオレットしか覚えていない。

ヴァイオレットとフリックはくっつき、ハッピーエンドとなりました。

 

 

その後の感想

ラストシーン、結局ヴァイオレットは他人の価値観に依存する形で生きて行くのでは?と思ったのですが、フリックと過ごすことによって少しづつ自分を肯定していけるのかな。モヤッとするなーーーーー

こう、「愛する人がいるから私は生きていけます♡」じゃなくて「愛してくれる人はいねぇ!愛す人もいねぇ!でも生きる!!」みたいな強さが欲しい…。支えてくれる人が一人もいないって状況、リアルには全然有り得ると思うんですよ。

いやでも「結局自分の感じ方次第だよね!世界って!」で終わったらそれはそれで「はぁ?」と思ってしまうので難しいところですね…

 

メンフィスで勇気を持てなかったフリックが勇気を出し、逆にモンティが身を引くという構図が面白いですが、モンティが身を引かなかったらorモンティの誘いにヴァイオレットが乗っていたらフリックはどうするつもりだったんだろう?

ヴァイオレットも最初はモンティと再会するためにフォートスミスへ行ったんですよね。自分に自信がある時はモンティで、自信が無い時はフリックを選ぶのもどうなんでしょう。容姿だけじゃなくヴァイオレットのそういう厄介なところを含め受け止めてくれるという点でフリックとくっついた方が良いとは思うんですけど。

フリックの愛はモンティへの当てつけのようにも見えるんですよね…どうだろう。捻くれ過ぎかな。

 

ふうかヴァイオレットは幼く見えることでフリックのことをパパみたいと言っていたことが引っかかって、ラストシーンも「大丈夫か!?それ本当に愛か!?大丈夫か!?」と凄く心配になりました。

ふうかヴァイオレットはモンティとの方がお似合いに見えたんですよね。モンティの態度もどことなく柔らかくてクズみが抑えられているように感じました。

 

ヴァイオレットの夢はきっと誰もが一度は持つもので。「あの人になれたら」「これさえあれば自分だって」と。美しくなりたいと思うあまり差別的になってしまう事もきっとよくあって、それは勿論無くしていきたいものだけど、演目の中に刺さる部分が沢山ありました。

加えて人物は三者三様、良い所も悪い所もあり等身大。

モンティは女性に差別的だけど黒人への理解は深い。ヴァイオレットは痛みを知る故に外見至上主義ぎみで黒人に差別的。フリックは女性への理解は深いが白人コンプレックスがある。

こういった部分もこの演目の魅力ですよね。色々としんどい部分やモヤッとする部分もありますが、どうにも嫌いになれない。再演があればまた足を運ぶと思います。

 

ここまで読んでくださった方ありがとうございます!疲れましたよね!管理人も疲れました!

書きながら何度もこれは公開しなくても良いんじゃないか?誰のためにもならないのでは?何故書いているんだ?と正気に戻りかけたので読んでくださった方が居るのならとても嬉しいです。お疲れ様でした!