いいえ、その日は舞台なので。

舞台へ通う金欠庶民の感想ブログ

PMC野郎【僕と死神くん】感想


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12/21 マチネ

シアターサンモールにて

 

あらすじ

腐敗しきった政治、先の見えない大不況。停滞感だらけの現代社会を正すべく、異世界から現れたヒーローが、死神界の王子・死神くんだ。不要な人間を間引きし、社会をより良き方向へ導くため、死神くんは今日も逝く!
―――現代社会の抱える問題をブラックかつハートフルに描いた超人気少年漫画『僕と死神くん』。ハリウッド映画化も決定したある日、作者・小林コロンバインが突如として謎の失踪を遂げる。担当編集者である榊原栄一はアシスタントと共に彼の捜索に当たるのだが、そこで彼らが見たのは、巨匠と呼ばれた男の過去に潜む漆黒の闇であった……。

 

あらすじを読んだ際に一瞬実在する漫画の舞台化かと思いましたがそうではなく、劇中で『僕と死神くん』という少年漫画が流行っているという設定。

タイトルのイメージからファンタジー色の強いお話と予想していましたが大筋としては結構普通…普通と言ってしまうと大いなる語弊が生じるので躊躇われるのですがあくまで「大筋」は普通だったと思います。

 

冒頭はDV家庭の様子から始まり、これが結構なえげつなさでずっと苦いものを口に入れられているような感覚。

売れない漫画家である夫は妻から金をせびりパチンコに通い少しでも金を出し渋れば暴力を振るう。二人の子供と妻は明るく麗らかな人柄。三人がワイワイと他愛もない話をしている部屋に夫が入ってくれば途端緊張が走り静まり返る。腫れ物に触るような雰囲気がリアルでした。

 

冒頭からじっくりじっくり毒を飲ませるようにDV家庭のしんどさやそれでも見切りをつけられない家族の遣る瀬なさを見せつけ浸透させたあと、突如不釣り合いなハイテンションで死神くんが登場。明るい曲に合わせ死神ガールズ達とのダンスが始まります。鳩が豆鉄砲ですよこんなの。(呆然としていたのでこの場面の記憶がほぼ無い)

死神くんが夫を殺し、家族は平穏を手に入れる…ところで場面切り替え。今までの話は漫画『僕と死神くん』に収録されているエピソードだと分かり、作者・コロンバインを主軸とした現実世界のお話へ。という流れ。

 

その後に流れるOPが物凄く格好良くてテンションが上がりました。映像も音楽もとても良い。OP映像はyoutubeで見ることができるので良ければ是非ご覧ください。

 


PMC野郎『僕と死神くん』

 

 

ここから普通じゃなかったところ(とても好き)

コロンバイン先生のアシスタントトリオ。

・猫じゃらしさん(猫じゃらし)

・猫田さん(猫)

・手塚さん(某有名漫画家とそっくりな治虫さん)

上記三人。もう既にツッコミどころ満載なのですが不思議とうまーく本編に馴染むのです。

コロンバイン先生の担当編集者が観客側の人間で、「いやなんでだよ!?」っというところはきちんと突っ込んでくれ、その後なんとか現状を飲み込むところまで観客と一緒。そこからはどんどん感覚が麻痺していき気が付いたらPMC野郎ワールドにどっぷり浸かっています。

「人間は忙しい時は猫の手も借りたいとか言う癖して実際に貸すとこれだよ!」という猫田さんの言葉に非常に反省した人間でした。因みにアシスタントチーフは猫じゃらしさん。礼儀正しい猫じゃらしです。

 

 

刑事トリオ。

・大沢

・稲葉

・中田

この三人ももうほんと好き…

まず『自分たちは刑事として舞台に立っているのだからどんな格好をしても刑事に見えるはずだ』という発想が天才のそれ。結果三人は女子高生の制服を身に着け生徒手帳を掲げ調査をする訳です。どうなってんだ。大沢役の方の女装が大変美しくて眼福でした。足が逞しいのがまた良かった。

 

こちらの三人は偶然にも全員がバイセクシャルであり中田を巡って争いが起こります。しかし『稲葉の両親は昔気質のカントリーマアム』という事実によりそんなことはどうでも良くなるのです。彼の前では湿気たカントリーマアムはご法度です。(何を言っているのか分からないと思いますが大丈夫ですついて来てください)

因みにカントリーマアムが1984年生まれ35歳、稲葉役の方が1987年生まれ32歳なので恐らくカントリーマアムは出産できるようになるまでの期間が短い。

 

 

※周りが個性豊かにぶっ飛んでいるせいでうっかりしがちですが『僕と死神くん』はコロンバイン先生が主役の舞台です。

ラストの展開は正直誰かに共感することができず泣くことはなかったのですが、シラけてしまわないのは役者さんの力かなぁと思います。

人物の背景を考察し深く共感することもできると思うのですが、誰かを悪者だと決めつけることになるような気がして、それはちょっと違うかなって。

共感はできずとも伝わってくるものはあると言いますか。どこか少し引っかかる。心のどこかが悲しい気がする。人のどうしようもなくダメなところや愚かなところ、優しさだったり愛情だったり虚しさや怒りだったりがわやくちゃになって泣きたい人は泣ける雰囲気のまま変に感動を煽って来ないあの場の心地よさを大切にしたいなと。

 

DVDで再度観たらまた印象が変わるのではないかなとその時を楽しみにしています。DVDはPMC野郎2020年6月公演にて発売です!(突然のダイマ