いいえ、その日は舞台なので。

舞台へ通う金欠庶民の感想ブログ

愛と哀しみのシャーロック・ホームズ 感想


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 9/1 ソワレ

世田谷パブリックシアター

 

普通に面白かったです。

しか感想が出てこないのですがどうしましょうか。

 

面白かった。

管理人はシャーロキアンではないので細かいネタは拾えませんがコメディとして非常に良質なものを観させて頂きました。誰かを貶めるでもなく蔑むこともなく、面白いでしょ?という自慰的な押し付けもなく自然にふふっと笑ってしまうようなとても良い雰囲気の演劇でした。

 

ただ期待していたものとはちょっとベクトルが違ったなという印象です。裏を返せばそう来たか!という感じではあるんですど。これは好みの話なので誰が悪い訳でもなく強いて言うなら管理人が悪いのですが。

三谷さんがシャーロックに柿澤さんを選んだ理由として孤独な雰囲気に惹かれたと仰っていたので孤独を必要とする、際立たせるような脚本なのだろうと思っていたのですが、実際にはシャーロックは周囲から愛されまくっているので孤独感は薄く、かわり(?)にジョンが妻の浮気を知り自殺しようと考えているし、マイクロフトは弟へのコンプレックスと家族愛と完璧主義の狭間で不安定だし、シャーロックよりも周りの人間の方が大変なことになっておりシャーロックが唯一ある意味で安定しているような気さえしました。

シャーロック自身についての説明が殆どなかったのは有名故に不要と判断したのか、周りとの関係性で存在を浮き彫りにさせるという構成そのものがシャーロックを表現しているのか…どうなんでしょうね。

 

あらすじから『緋色の研究』以前の物語だと知っていましたが起こる事件起こる事件が非常に小さなもの(スコーンが盗まれたとか)なのでそこを期待すると肩透かしを食らうかも知れません。再三言われていることではありますが、まだ探偵になる前の未熟で幼稚なシャーロックを観るつもりで行くと良いかと。ハラハラレベルとしてはそのまんま子供を見ている感覚です。

 

主にジョンとマイクロフトに焦点を当てた構成なのでシャーロックを入れて3人いれば成立しそうな話ではあるのですが、周りを固める女性陣が良い味を出していて好みでした。特にアリスさんは一番身体を張っているというか〝熱演〟を演じている時の表情や仕草を含め若い女性に何をさせているんだというメタ的な視点での面白さもあり好印象でした。(そこで下品なキャラに仕立て上げ醜悪な笑いを取りに来ないのが三谷さんの良いところ)

柿澤さんのシャーロックは柿澤さんの良いところ全部詰めみたいなところがあったのでファンにとっては嬉しいんじゃないかと思います(どこから目線)

管理人はもっとジメッとした雰囲気とか身を切り裂きそうな孤独が好きなのでちょっと好みからは外れました。三谷さんの作風的にそうならないのが必然という気がしますのでやはり好みの問題かなと。

 

全体的にあまりドラマティックな展開は無いのですがカードゲームはシャーロックのモノローグで推理が繰り広げられ、映像(シャーロックの脳内を映すもの)と相まって視覚的にも楽しかったです。舞台でああいう演出は新鮮ですね。

ジョンとの関係性はドラマティックではあるのですが初期からあそこまで信頼し、友人として受け入れているのならこれから先二人の関係性はどうなって行くのだろうとボーイズたちの今後が観たくなるような舞台でした。