あらすじ
[Confettiサイトより引用]
ある南の島・・・。その島では戦争が行われていた。
激しい銃撃戦の末、二人の兵士が追いつめられて、ガジュマルの大木の上に身を隠す。その木は太い枝と覆い茂った葉で絶好の隠れ場所であった。
本土出身、生真面目で戦争経験が豊富な”上官”と、島出身、おおらかな性格で初めて戦争を経験する”新兵”。
彼らを静かに見つめるのはガジュマルに棲みつく精霊”語る女”。木の下に広がる仲間の死体・・・日に日に大きくなっていく敵軍の基地・・・。
兵士達は、終戦を知らぬまま二年もの間、二人だけの”孤独の戦争”を続けた。
キャスト
上官:中西惇
新兵:松下洸平
語る女:普天間かおり
ヴィオラ演奏:有働皆美
5/15、5/19マチネに観劇。
戦争系の話は苦手だったので今まで意図的に避けてきたのですが、松下さんが出演されているということで行ってきました。観ることができて良かったと思います。
管理人が戦争の話が苦手だと思うのは自分に故郷がないこと、場所や土地に思い入れがないこと、家族との縁が薄いことが根本にありまして。故郷が戦場になってしまった新兵の気持ちはきっと分からないし同調できないだろうと思っていたのですが、自分でも予想外に泣いてしまいました。
新兵の気持ちが分かる訳ではないんです。同情とも違う。ただ理解できなくても寄り添うことはできるのだなと思いました。
悲しいことを悲しいと知っていることに何の意味があるのかと、今まで戦争を語り継ぐということに対して疑問に思うこともあったのですが、多分こういうことなんだなと。これは必要なことなんだと心から思いました。
それぞれの事情がありますから1度しか観劇されない方もいると思うのですが個人的には2度観て頂きたいです。
ラストまでの流れが分かった後で観ると、新兵の心の動きがとてもよく分かります。言葉にしていなくても表情や仕草に感情がちゃんと出ているんですよね。
初めは呑気な新兵と軍人らしい長官という構図ですが時が経つに連れてそのポジションが逆転する。初回はいつの間に?という感覚でしたが新兵の中に降り積もっていく悲しみやそれによって起こる怒りがちゃんとそこにあります。
この作品を観て、人の死についての価値観が少し変わった気がします。
自分にとっての死とは悲しいものでは無くいつでも側にいて寄り添ってくれる、この世で唯一の救いだという感覚があり、他人の死とはあくまでも他人のものであり不回避で自分にはどうしようもない事象であるので特別何がどうということは無く。つまり人間の死に無関心だったんですよね。
でもこの木の上の軍隊を観て改めて、本当に改めて心から戦争はしてはいけないなと思いました。
演目の最後の方にヘリの音や銃声、エンジン音、人の足音など戦争に関する音が一斉に流れるのですがあれはかなり衝撃的でした。考えるまでもなく直感で、これは二度と起こしてはいけないものだと理解します。あの音は人の不安や悪意を掻き立てる音です。
今戦争が起こったとしても自分は徴兵されることは無いのでしょうが、あんなにも怖い場所に自分よりも年若い男の子が行かなくてはならないと考えただけで耐え難い気持ちになります…
戦争、ダメ。ゼッタイ。
ちょっと硬く書きましたが面白い場面も沢山ありました。
ガジュマルの木は本物がそこにあるかのようなリアルさで見ているだけで面白いですし、新兵と上官のどこかズレたやり取り、語る女との掛け合いはおかしくて思わず笑ってしまいます。個人的には上官の『どうするんだこれ!?』がかなり好きです(笑)
アフタートークの時に井上麻矢さんからお話がありましたが、クラウドファンディングを行うようです。
自分は選挙へ行くくらいしかすぐに行動できることが無いので、何かできることがある、そういう場を作る側から用意してくれるというのは本当にありがたいお話ですね。
こまつ座さんの公演を観たのは今回が初めてなのですが他の演目も観てみたいと思いました。
取り敢えずは、母と暮らせばの再演を期待します。