9/11 ソワレ
日生劇場にて
<キャスト>
ダニエル:木村達成
アンダーソン:加藤和樹
ジャック:堂珍嘉邦
グロリア:May'n
ポリー:エリアンナ
モンロー:田代万里生
<東京公演>
期間:2021年9月9日(木)~9月29日(水)
会場:日生劇場
<大阪公演>
期間:2021年10月8日(金)~10日(日)
会場:フェニーチェ堺 大ホール
SS席:16,000円
S席:13,500円
A席:9,000円
B席:4,500円
Yシート:2,000円
<あらすじ>
1888年ロンドン。
刑事のアンダーソン(加藤和樹・松下優也)は娼婦だけを狙う、“ジャック・ザ・リッパー”と呼ばれる殺人鬼(加藤和樹・堂珍嘉邦)を追っていた。残忍な犯行で解決の糸口も見えないため、マスコミを排除し非公開で捜査を進めようとする。 しかしロンドンタイムズ紙の記者、モンロー(田代万里生)はスクープ記事のネタを狙って アンダーソンに近づく。 モンローは、麻薬中毒者で金が必要なアンダーソンの弱みにつけこみ、情報提供の取引に応じさせてしまう。
4度目の殺人現場で、アンダーソンの前に男が現れ「犯人を知っている」と告白する。「そいつの名前はジャックだ」と。 彼は、7年振りにアメリカからロンドンにやってきた外科医ダニエル(木村達成・小野賢章)。 7年前、ダニエルと元娼婦のグロリア(May’n)はジャックと出会っていた。
犯行が重ねられ事件は混迷を極めていく一方。 アンダーソンはダニエルの告発に基づき、おとり捜査を計画するが、ロンドンタイムズ紙は “ジャック・ザ・リッパー”の殺人予告記事の号外を出してしまう。 そして、アンダーソンと彼のかつての恋人だったポリー(エリアンナ)までもが事件に巻き込まれる。
果たして、殺人鬼“ジャック・ザ・リッパー”の正体とは…?
そして、本当の目的とは…?
行ってきましたジャック・ザ・リッパー。キャストは素晴らしかったです。
この一文で舞台オタクなら全てを察してくださるかと思いますが管理人には刺さらない演目でした。
なので何が刺さらなかったのか、ということを重点的に書いた感想となります。ネタバレしていくので未見の方はご注意ください。
- ストーリーの流れ
- ツッコミ①一幕冒頭
- ツッコミ②回想
- ツッコミ③火事
- ツッコミ④グロリアの生存
- ツッコミ⑤犯人の名前
- ツッコミ⑥時系列
- ツッコミ⑦目印の花
- ツッコミ⑧血まみれ
- ツッコミ⑨モンロー
- ツッコミ⑩正気
- ツッコミ⑪ダニエル
- ツッコミ⑫怒涛の展開
- 感想
- 終わりに
ストーリーの流れ
大まかなストーリーの流れとしては
①一幕冒頭、現在(9/4)
アンダーソンが捜査報告書を書いている
⇒
②二日前(9/2)、3人目の被害者
謎の殺人鬼が現れ3人目の被害者が出た。アンダーソンがモンローに脅され取引をすることになる
⇒
③一日前(9/3)、4人目の被害者が出る
外科医のダニエルが犯人を知っていると告白する
⇒
④7年前(1881年)、ダニエルの過去
臓器移植の研究のため臓器を求めるダニエルはグロリアを介してジャックと出会う。グロリアと恋に落ちるダニエル。グロリアがジャックを警察に売り飛ばしたことでジャックに報復される。ジャックは警察に撃たれ死んだとされる
⇒
⑤一日前(9/3)、事情聴取
ダニエルが犯人を知っていると告白した後、ダニエルの事情聴取。ダニエルいわく一ヶ月前にグロリアが生きていたことが判明し死んだはずのジャックとも再会したと。
⇒
⑥二幕冒頭、一日前(9/3)。捜査協力
アンダーソン(とモンロー)の捜査に協力することにしたダニエル。3人でダニエルの研究室へ行く
⇒
⑦一カ月前(8/3)
ダニエルがグロリアとジャックに再会した話の詳細。グロリアは7年前の火事により全身に火傷を負っており梅毒も患っている。ダニエルは臓器移植をするしかないと考えるが、高額な募集をかけても墓を掘り返しても新鮮な臓器は手に入らない。そうした時ダニエルはジャックと再会する。
⇒
⑧一カ月前(8/3)→一日前(9/3)捜査協力
ダニエルはジャックと手を組み、娼婦の臓器を手に入れる。目的を達成した筈がジャックの殺人は止まらない。娼婦を殺したことをグロリアに感づかれ、良心の呵責に苦しむダニエルはアンダーソンの捜査に協力することにする。
⇒
⑨現在(9/4)、ジャック逮捕計画
アンダーソン、モンロー、ダニエルの三人はジャックが現れる瞬間を狙いジャックを逮捕する計画を立てる。計画に協力してくれる娼婦を探す。
⇒
⑩現在(9/4)、新聞記事の用意
モンローはジャック逮捕計画が成功することを前提とし、翌日朝刊に載せる記事の準備をする
⇒
⑪現在(9/4)、目印の花
アンダーソンは元恋人で現娼婦のポリーに会いに行く。ポリーにジャック逮捕計画を伝えないまま獲物の「目印」となる赤い花を渡してしまう
⇒
⑫現在(9/4)、ポリーの死
翌日朝刊に載るはずだった記事がその日の夜のうちに世に出てしまう。ジャック逮捕計画を中止しようとするも時は遅く、ポリーは殺される
⇒
⑬現在(9/4)、ジャックザリッパーの正体
ポリー殺害の際ジャックは現れなかった。混乱するダニエル。本物のジャックは7年前に死んでおり、今回の事件を起こしたジャックザリッパーの正体はダニエル自身であったことが判明する。
⇒
⑭現在(9/4)、研究所
ジャックザリッパーの正体に気がついたアンダーソンがダニエルの研究室に押し掛ける。ダニエルをボコボコにするアンダーソン。ダニエルとアンダーソンにマッチポンプの提案をするモンロー
⇒
⑮現在(9/4)、死
ダニエルを止めるためグロリアが自害。ダニエルをアンダーソンが銃殺。真実を知れば人々はダニエルに同情し、ジャックザリッパーの被害者たちがただのお飾りになってしまうことを嫌ったアンダーソンは全てを闇に葬るため研究所を爆破する
なので時系列としては
1881年(7年前)
④ダニエルの過去
⇒8月3日(一カ月前)
⑦ダニエルがグロリア、ジャックと再会
⇒9月2日(二日前)
②3人目の被害者
⇒9月3日(一日前)
③4人目の被害者
⑧捜査協力
⑤事情聴取
⑥二幕冒頭、捜査協力
⇒9月4日(現在)
⑨ジャック逮捕計画
⑩新聞記事の用意
⑪目印の花
⑫ポリーの死
⑬ジャックザリッパーの正体
⑭研究所
⑮死
①一幕冒頭
となります。なるべく分かりやすいように書いてみたのですが分かりにくいですね…。間違いがあったらすみません。
ツッコミ①一幕冒頭
二幕のラストが一幕冒頭に繋がるのは長い…!回収までが長すぎる…!
そして回収するほどの伏線でもない。
一幕冒頭のアンダーソンなんてほぼ自宅に帰ってきてコカイン吸ってタバコ吸っただけですよ?(ジャックザリッパーの概要を説明してはいるけれど)
このシーンで「ジャックザリッパーの正体は不明」というところまで言ってしまって良いと思う。ジャックザリッパーの話は有名なので隠すこともないし、もう犯人が誰であるかは明らかにしておいて、それなのに何故「不明」とされたのか、という流れの方が伏線として機能する。
それなら今まで観てきた物語が全てアンダーソンの回想(捜査報告書)だったんだなと思えてラストの収まりも良くなりますし。
ツッコミ②回想
7年前の回想の導入がアンダーソンなのに回想の中身は全部ダニエルの話でお前は出ないんかーーーーいとなった。
そもそもアンダーソンがなんでジャックを捕まえたいのかイマイチ分からないんですよね…仕事熱心という訳でもないし、かといって完全にお金が目的(モンローとの契約により犯人逮捕でお金が手に入る)という訳でもないですし。7年前にアンダーソンとジャックの間で因縁があれよ。因縁があるのはダニエルの方なんかい。
早々にポリーをジャックに殺させておいてアンダーソンとジャックの因縁を演出してくれていたらもう少し入り込めたと思います。それならアンダーソンが薬中になった理由も分かりやすいですしね。
ツッコミ③火事
グロリアに対するジャックの報復が「火を放つこと」なんですよね。いやなんで?ジャックの得物は刃物ではないのですか。切り裂いてくれよ。(ジャックザリッパーをジャック自身が名乗った訳ではないのでアレですが…でもやっぱり得物は刃物だと思うので…)
「贈り物だ」ってわざわざ言うくらいなんだから助けに来たダニエルにぐちゃぐちゃになった愛する人の姿を見せてあげてよ。
もしくは臓器を求めるダニエルに良い臓器が手に入ったよ♡って言ってグロリアの内臓を渡して、喜ぶダニエルが後々それがグロリアの物だったことを知って絶望してくれ。
ツッコミ④グロリアの生存
そんなこんなで結構な尺をとったグロリアは生きてるんかい。しかも火事から7年が経っているとか。半年や一年くらいなら分かるけど7年は長くないですか。色んな意味でよく生きてたなグロリア。
あれから7年生きられるなら、あの時泣き崩れてないで火の中に飛び込んだら助けられただろ。もしくは一緒に死ぬべきだろ。お前の愛はそんなもんなんかダニエル。
「くだらないノロケ話を二時間も聞かされた!!」って激怒するアンダーソンは正しいよ(その時はまだグロリアが生きていたことは聞いていないけれど)
ツッコミ⑤犯人の名前
ダニエルの事情聴取の場面、犯人の名前は?!一体?!ってめちゃくちゃ盛り上げて来るんですが君らもう犯人の名前がジャックだって聞いた後ですよね?どういう感情?
高台から高らかに「そいつの名前はジャーーーーック!!」って叫んでいたの忘れたんですか?二時間ノロケ話を聞いてたせいで?仕方ないね?
ツッコミ⑥時系列
作者が時間を巻き戻すのが好きすぎる。
時系列が分かりにくくなるのは別に良いのだけど(こちらが頑張れば良いだけなので)時間を巻き戻して得られる演出効果が少ないと感じる。
何のために時系列の入れ替えを多用しているのでしょうか。ダニエルが二重人格だということを隠したいのだとしたらそれはもう隠さなくて良い。みんな知ってる。少なくとも二幕冒頭で察しはつく。もしそこ(二重人格)に一番の盛り上がりを持ってきたいとするなら構成から(ry
ツッコミ⑦目印の花
アンダーソンは元恋人のポリーに未練タラタラで、寄りを戻したいと願い続けているのになんでジャック逮捕計画を伝えないまま獲物の「目印」となる赤い花を渡してしまうんでしょうね???まじで分からない。
流れ的には花を用意する→渡そうか悩む→ポリーが「私へのプレゼント?」と喜んで花を髪に差してしまうという流れなので、正確にはアンダーソンが渡した訳ではないのですが、それにしたって、それにしたって…!
今夜それ(花)をつけていたらジャックに狙われる確率は100%なんですよ?!雰囲気に流されて渡すもんじゃないだろ。ポンコツか。
そのあと案の定ポリーは殺され、ポリーの亡骸を抱えて「ちくしょう…!」と叫ぶアンダーソンですが「ちくしょう」じゃないのよ。100億%お前のせいなのよ。
ツッコミ⑧血まみれ
ダニエルの「手が血まみれーーーーーーー」は狙って面白くしてないですか?こんな歌詞ある??シリアスな場面なのにコメディーでしたよ(結構好きでした)
ツッコミ⑨モンロー
二幕後半でモンローが警察官を殺すのですが、何でなんです?
ダニエル、アンダーソンと手を組み、殺人・捜査・記事のマッチポンプをしようと持ち掛けるモンローですが、自分で殺せるなら自分で殺して自分で記事を書けば良いだけでは?その方が儲けも独り占めだし。ダニエルとアンダーソンを殺してジャックザリッパーを自分で引き継げば良いじゃないですか。警察官を2人殺したなら3人も4人も変わらないでしょ。(警察に仲間がいた方がやりやすいのでアンダーソンは生かしておいても良いけれどダニエルはいらなくない?)
そもそもモンローは性格的に自分では手を下さないタイプだと思うんですよね。金の亡者であるモンローの行動がここだけ一貫していないように感じます。
そのあと「あともう一枚だけ…」と写真を撮っている間に研究所が爆発するのもダサすぎる。このセリフ要りました…?アンダーソンが去った時点ですぐ爆発で良かったよ。
もしモンローが生きていたらアンダーソンはどうするつもりだったのか。ちゃんと息の根を止めて(せめて足を撃ち抜いて)から現場を去らないとダメだよアンダーソン。
ツッコミ⑩正気
「正気か!?」みたいな台詞が出るたび「正気な奴なんて最初から一人もいなかっただろうが!!」と叫びたくなりますね。
一番まともだったのはジャックではないでしょうか。依頼を受けて殺人をしていただけで単なる快楽殺人とも違いますし(快楽が無かったとは言ってない)単に仕事をしていただけですよね彼。
ツッコミ⑪ダニエル
ダニエルの感じている責任感がちょっと良く分からなくて。
グロリアはジャックを裏切った結果として報復を受けたのでダニエルが居ようが居まいが報復は受けていた筈なんですよね。それを過剰に「自分のせいで…」と病んでいくダニエル…なんで?(愛する人を襲った悲劇で自責する気持ちは分からなくもないですが、どちらかというとジャックへの憎しみが出るものではないでしょうか)
ツッコミ⑫怒涛の展開
とにかく二幕が忙しい。
三分クッキングを凌ぐスピード感。ダニエルが銃殺されたあたりであまりの忙しさに笑ってしまった。管理人の好みとしてはもう少し…余韻とか…情緒とかを…いただけると…。
観劇途中から群像劇なのかな?と思うほどどの役にもスポットが当たりつつ当たりきっていないので誰にも寄り添えないまま悲劇だけがてんこ盛りになっていて全然悲しめなかった。おいしい食材が全部入ったうえで何も打消し合わずにすべての味がする(つまり不味い)
なんか…みんな…大変だね…(総括)
感想
ツッコミパートは終わりましたのでその他の感想を。
ダニエル
演目のことを何も調べないまま観劇したので当日はアンダーソンが主役だと思っていました。二幕からダニエル中心のお話になるので?とは思っていましたがカテコで木村さんが座長だったことを知りとても驚いてしまった…座長おめでとうございます…。
木村さんのダニエルはアホ可愛くてとても良かったですね。
グロリアに「それじゃ毎日会える…!」と言う場面なんて微笑ましすぎてこのままラブコメが始まっても良いとさえ思った(良くない)
「一目見た時から胸が痛い」のところや、仲間に「僕は遂に恋に落ちたんだ!」と報告するところも可愛いな!幸せになれよ!(ならない)
グロリア
ジャックから報復を受けたのは自業自得ですが、時代背景やグロリアの状況も考えると一言では済ませられないものがありますよね。
最後に自害したグロリアは偉かったね…。「火傷と同時に心も歪んだ」と言っていたけれど大分誠実な人だったよ。幸せになれたら良かったのに。
ジャック
二幕で「友達だろ?」と登場するジャックはトートみがありますね?友達を名乗る奴にロクな奴はいないということが分かる良い例。
獲物にする娼婦をダニエルに選ばせて「良い獲物だ。俺も目をつけてた」って言うところが大変に可愛い。ジャックが楽しそうで何よりです(実際はダニエル一人だけど)
堂珍さんは今回が初見だったのですが良かったですね〜。歌は曲と相まってロックバンドのライブ感がありましたが嫌じゃなかったです。飄々とした掴めないところとか、ジャックの人外感が出ていて良かった。
二幕後半、みんなが最高潮にバタついている中、へーーーーー興味無いですねーーーーーーって感じで背を向けテーブルに座ってのんびりしている堂珍ジャックが可愛いです。
一緒に観劇したフォロワーさんが「ジャックのステッキは何の意味があるの?」と言っていたので考えてみたのですが①二幕でジャックとダニエルの入れ替わり(二重人格の可視化)を分かりやすく演出するため②ステッキの持ち手をダニエルに引っ掛けて引き寄せるというヘキを表現するため③裕福層の自己顕示(時代表現的な意味で)表現のため
管理人的には②のヘキ説を推します。
アンダーソン
ポリーに未練タラタラのアンダーソンも何気に可愛くて好きです。
花を渡す前の2人の雰囲気とか素敵でしたよね。お互いにまだ思いはあるのにどうしようもない感じとか。ダニエルとアンダーソンを見ていると性別に関わらず「可愛い」は最強なんだなと思います。
モンロー
まりおさんはあんな小物感のある役もできるんですね…。ルキーニとかもできそうじゃないですか…(やって欲しいとは言ってない)
歌声の端っこに時折貴族を感じました(隠せない歌の上手さ)が見事に金の亡者のゲス記者でした。
終わりに
あくまでも管理人には刺さらなかったというだけの話なので、自分は大好きだったよ!という方はどうぞそのまま大好きでいてくださいね。感想もバンバン書いちゃって。良かったよ!って方の感想も読みたいのです。
そんな管理人ですがここまで書いたところで一周回ってもう一度ジャック・ザ・リッパーを観たくなってきました…(何故刺さらなかったのかを考え続けているとまた観たくなってしまうあるある現象)
脚本としてはツッコミどころ満載なのですが逆にもうそこが良い!みたいな。ダニエル役の方が好きな人は観に行くと良いと思います。役がおいしいので。
歌い上げる系の曲でキャッチーなものはあまり無かったのですが、冒頭の捜査報告書のシーンや事情聴取のシーン、ピアノ演奏でも繰り返し出てくるあのメロディーが好きでした。あの曲をもっと聞きたいな…。
[追記]
追いチケットしました。
これだからオタクってやつァ…!
その後沼落ちした管理人の様子はこちら。