いいえ、その日は舞台なので。

舞台へ通う金欠庶民の感想ブログ

松柿【スリル・ミー】感想

観劇歴3年で全ての舞台を振り返る訳にもいかないので

第一弾の感想としてこちらを。

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スリル・ミー

[公式サイト及びWikipediaより引用]

『スリル・ミー』(Thrill Me)は、アメリカの作詞・作曲家ステファン・ドルギノフが、1924年に起きたレオポルドとローブ事件をもとに製作したミュージカル。私と彼と1台のピアノが織りなす究極の100分間。

東京 東京芸術劇場シアターウエス
2018年12月14日~2019年1月14日

全席指定 8,500円

大阪 サンケイホールブリーゼ
2019年1月19日〜20日
S席 8,500円

名古屋 名古屋市芸術創造センター
2019年1月25日
全席指定 9,500円

キャスト

私:成河   彼:福士誠治
私:松下洸平 彼:柿澤勇人

 

2018年の年末にぶん殴られ、未だに殴られ続けている舞台である。

この舞台の良いところは実際の事件が元になっているので資料を漁りどこまでも真実を追うもよし、時代背景や倫理、哲学、心理学の観点から考察してもよし、ストーリーに没頭し涙を流すのもよし、キャラを掘り下げ二次創作するもよし、俳優同士の濃密な絡みに萌えるのもよしというところです。

先程まで専門的高度な考察を語っていた方が2秒後には「無理‥」と5歳児並みの語彙力になったりする大変に愉快な演目です。

 

 

ここでは松柿についての感想を。

まず初めに書いておきますが管理人は松柿ペアが刺さらなかった人間なので「松柿への賛辞しか認めない!」という方は今すぐに禁じられた森へお帰りください。

とはいえ決して悪かったとかそういう訳では無いのです。

先人の「前情報なしで観て欲しい」という言葉を受け、何の情報も無いまま劇場へ行き観劇後の感想が「???」だったというだけです。

あまりにも刺さらなかったので自分の感受性がぶっ壊れているのかと思ってチケットを増やしました。

次の観劇に備え実際の事件から過去の公演・CDあらゆるものを漁りまくり、結果2011年のまりにろペアに嵌ったのですがこの話は割愛します。

 

 

ざっくりと印象

松柿はパワーバランスが非常に拮抗しているペアです。

彼と私は幼馴染でありながら主従関係・隷属関係にあるのですが松柿はともすれば彼の方が弱く見えるほど私が強い。

体格差もそれほど無く、松下さんがしっかりと言葉を発するので「お前結構主張強いな?」というのが最初の印象でした。

その強い主張を「だが断る」と言うのが柿彼。

 

19歳という設定ですが柿彼はそれよりも幼く見えます。
身体だけ成長してしまった子供の様な。

一見表情豊かでヘラヘラしがち、軽薄な印象。

かと思えばフッと表情が消えて空虚を見つめていたり、このまま消えてしまうんじゃないかと思えるほどの儚さを見せる。(そういうところほんと好き)

幼稚・脆さ・自虐性あたりがキーワードじゃないでしょうか。

彼が私にちょっかいをかけるのは試し行動としての側面もあるのかなぁと

 

この彼は私がぶん殴って引きずって帰ってくれば多分止まるんですが、私は私で彼の配下に居たいというか彼を彼たらしめているものが好きで、ある意味では彼自身を見ていないのではないかと思いました。

だからお互いがお互いを強烈に求めているのに何処か虚構を感じる。

彼を超人にしたかったのは私自身かなと。

 

あと松私は柿彼をいつだって見ていて細心の注意を払っているのに彼の地雷だけをピンポイントで踏み抜く。

お前そういう所だぞ。

 

 

松私について

松私は個人的に非常に好きです。

表情・歌・台詞どれをとってもとても良い。

松下さんの声質というか歌い方的に伸びやかな曲よりもポップスや音符の跳ねたジャズっぽい曲が似合う気がします。

 

上にも書きましたが松私は強いです。

自我があり、敢えて自分の意思で彼の後ろを歩いている。

なよなよしさと男らしさのバランスが絶妙で、『スリル・ミー』でサスペンダーを脱ぐ動作が生々しくて気持ち悪くて最高に好きです(褒めてる)

 

 

そんな松私ですが初観劇後は「なんで自殺しないの???」という疑問でいっぱいになりました。

松私は最初の仮釈放審議委員会の時点でとても反省しているように見えたので、仮釈放された後どういう心理で「僕たち 二人 共犯者」と言うのかまるで分からなくて。

そもそも反省していたのなら何故自殺しないのか?本当に反省していたか?反省していたなら彼の死を「思い出したくもありません」などと言うだろうか。逆に反省していないなら彼がこの世を去った時点で何故自殺しないのか?彼が死んでからの21年をどんな思いで生きてきたのか。すべてを受け止めて生きるなんてことができるのか。そんなに強い人間か?あそこまで彼に傾倒していたのに?(とても早口)

 

いや‥まぁ‥自殺してしまったら語る人が居なくなるので仕方がないのですが。

 

ちゃんとした落としどころを見つけたくてぐるぐると考えましたがそもそもそんなものは無いのかも知れません。

愛情・執着・依存・後悔・憧れ・懺悔・不安・怯え・反省・悲しみ・虚しさ、全てが真実でお互いを打ち消し合うものでは無いのではないか。

そう思ってこの件は2回目以降から記憶の淵に追いやりました。

何か独自の解釈をしている方がいたら教えてください。

 

 

柿彼について

グレーのスーツが似合わねぇ

第一印象はこれに尽きます。

全国の柿澤さん推しの皆さんごめんなさい因みに管理人も柿澤さん推しです。

 

いえ分かるんですよ分かるんですよ

私が寒色系の服装なので補色として彼は暖色系のグレーですよね?

分かりますよ、補色と言ったって冴え渡るオレンジのスーツを着る訳にはいきませんからね?

にしたって似合わないな?

恐らく柿澤さんが細すぎるのも原因の一つだと思うんです。

普段はスーツもタキシードもとてもお似合いで格好いい人なんです衣装さん!衣装さん‥!(多分誰も悪くない)

 

加えて柿彼は幼い印象なので余計に子供が背伸びをしている感じというか、大人びた服装や髪型や仕草であればあるほど幼稚さが浮き彫りになっていて解釈が追いつくまでに時間がかかりました。

私は彼のどこがそんなに好きなんだろう?

分析に観客の観察力と知力が求められる。

松柿は上級者向けのペアだなと思います。

 

気になったこと

・夏の話なのにスーツ

シカゴの夏は湿度が低く8月でも夜は25℃を下回り肌寒いこともあるそう。それでも昼間は28℃くらいなので少し熱そうな気がしますが。

 

・彼のズボンの裾がダブル

1920年代のお洒落要素だった模様。

彼だけがスリーピースなのも彼のお洒落さを際立たせていて良いですね

 

・野鳥図鑑とかあるのかなぁ

私の趣味がバードウォッチングということで1920年代にイリノイ州で出版されていた野鳥図鑑を調べてみたものの該当するものは探し出せず。どなたかご教示ください。

 

 

好きな曲

松私:あの夜のこと

跳ねる系の曲がとても良く似合いますよね。

警察への言い訳を考えている歌とは思えないほど愛嬌があって可愛らしいです。

 

柿彼:スポーツカー

仄暗さが至高。さながら消えかかった1本の蝋燭のよう。

空気がひび割れそうな緊張感で子供だけでなく彼にも「ここが最後だよ、まだ間に合うよ。だめ、行っちゃだめ」と言いたくなるような悲痛さを感じました。

 

 

零れもの

松柿ペアと成福ペアで台詞や動きが違うシーンが沢山あるのですが全体を通して松柿ペアは接触が多いというか松私が常に彼を触っている。

柿彼はお触りOKなのですが後一歩のところで払い除けるので、いい雰囲気だったのに手を出したらキレる女みたいだなと思いました。

 

『計画』で「親が悲しむ」と言って彼を説得する松私にそういうところ~~~~!!って指を突き付けたくなる。

家族からの愛情を感じられていないと思われる彼に向ってその説得の仕方は地雷すぎる。

「子供を愛さない親なんて居ない」とか言い出しかねない。

そういう無意識にお育ちの良い所が彼のカンに触るんだぞ。

 

 

最後に

松柿は対等な関係で幼馴染感が強いペアです。

恐らくその対等さが自分には刺さらなかったのだと思います。

上級者向け、と言いましたが初見でも2人の関係性にハマる方は沢山いることでしょう。

機会があればご自分の目で確かめてみてください。(頼むから機会をくれよ公式)

 

公演が終了して約3ヶ月、思い出しながら書いたので内容が薄いかも知れませんが書ききれて良かったです。

松柿過激派に刺されないことを祈ります。